消化液の排水処理

消化液の排水処理

消化液を排水として処理する場合、BODや硝酸態窒素濃度等を適正な基準にまで低減する必要があります。基準値は放流先にもよって変わりますし、地域によっては上乗せ基準があり、行政への確認が必要です。
排水処理の方法として、大別すると「生物処理」と「物理化学処理」の2種類になります。どちらかを採用するというよりは、複数の方法を組み合わせて処理がなされることが一般的です。以下では、それぞれについてと、それらが混合した1つの処理方法である「人工湿地」について紹介します。

生物処理

微生物を使った排水処理の方法で、「活性汚泥法」や「生物膜法」がこれに該当します。(活性汚泥法は下水処理場で行われる処理方法とイメージするとよいかもしれません。)
消化液を処理する場合には一般に採用される活性汚泥法は、高いBODであっても処理が可能ですが、曝気を必要とし、電気代が高くつくことが特徴です。

物理化学処理

「固液分離」や薬剤による「pH調整」、「膜分離」などが物理化学処理に該当します。
消化液を物理化学処理のみで処理できることは少なく、多くの場合、生物処理と組み合わせて処理されることになります。

人工湿地

人工湿地とは、人工的に作り出した湿地に汚水を流し込み、浄化するものです。
薬剤の使用がなく、曝気も行わないため、維持管理費を大きく低減することが可能です。ただし、活性汚泥法などの設備と比較すると、必要となる敷地面積はかなり大きくなります。

表面流式人工湿地

田んぼのような「湿地」を作り、植物や土壌の力で汚水を浄化するものです。自然の湖沼による浄化能力を人工的に再現した形ともいえます。
設備としては非常に単純ですが、凍結等の環境の影響を避けられないという欠点もあります。

伏流式人工湿地

底をろ材(ろ過するための砂利などの材料)とした湿地に汚水を流し通し、物理的なろ過、化学的な吸着、生物的な分解の組合せにより浄化するものものです。(伏流:地表の水が地下へと浸透して流れること)
表面流式人工湿地よりも面積あたりの浄化能が高く、ろ材を通して汚水をろ過するため、冬季でも凍らずに浄化能が持続できます。
株式会社たすく、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、地方独立行政法人北海道立総合研究機構(道総研)が特許技術として普及させてきたものは国内で20件ほどの導入事例があり、メタン発酵消化液の他、畜産農家における糞尿、搾乳牛パーラー汚水などの処理に使われています。
用地に余裕があるのであれば、安価な処理方法として検討することが望まれます。
伏流式人工湿地に関しての詳細は農研機構加藤氏のサイトをご覧ください。

図1 ハイブリッド伏流式人工湿地ろ過システムの流れ図(4段の例)

図2 伏流式人工湿地の様子